楽曲から収益をあげる方法

楽曲から収益をあげる方法

ミュージシャンが楽曲から収益をあげる方法まとめ

 多くのミュージシャンにとって、音楽は仕事である前に、芸術であり、表現手法です。

 とは言え、生活していくためにお金を稼がなければならないのもまた事実。大成功を収めた一握りのミュージシャン以外は、生涯このジレンマと闘っていく運命にあると言えるでしょう。

 私も例外ではありませんが、幸運な事にProduction Musicビジネスを通じて生計を立てる事が出来ています。アーティストの様に、自分名義の作品を世に問う事は出来ませんが、曲のコンセプトから仕上げまですべてを自分の裁量をで行い、テレビ番組のプレイスメントを通じて自分の楽曲が数千万人以上に届いている満足感も得る事が出来ています。

Production Musicビジネスに関してはこちらから↓↓

 表現とお金というのは大昔からアーティストのジレンマであり続けていると思いますが、この記事では、ミュージシャンが楽曲を通してお金を稼ぐ方法を考えてみたいと思います。

 なお、テクノロジーの進化により、日々新しい活動形態で成功を手にするアーティストが生まれていますが、すべてを網羅しきれないので、この記事ではメジャーなものに限って紹介していきます。

アーティストビジネス

 一般の方が真っ先にイメージする音楽ビジネスがこれだと思います。ミュージシャンが曲を作り、ライブやSNSの活動等で人気、知名度を獲得しCDやグッズを売ったり、音楽配信したりします。

 多くの場合、音楽出版社が著作権を預かり、レコード会社が制作費を出したり、プロモーションを行う代わりに利益の分配を得るというビジネスモデルです。アーティスト自身を商品とする意味で、自分で曲を作らない歌手やアイドル活動などもこの中に含まれます。

 楽曲で稼ぐと言うより影響力で稼ぐと言うのがアーティストビジネスの主眼かもしれません。

 成功する事で多大なる影響力と、報酬を得られる反面、成功するのはほんの一握りで、成果が出るまで、ほとんど金銭的リターンを得られないのがキビシイところです。

音楽クリエイター

音楽を制作してその対価を得たり、音楽出版契約から使用料を得ます。

 ●アーティストに楽曲提供

 レコード会社や音楽出版社からの依頼を受けて、楽曲を作りアーティストに提供します。曲がコンサート、TV等で演奏されると著作権使用料が発生して著作権管理団体から分配を受ける事ができます。

 実際は、多くの作曲家が同じ案件に曲を書き競う楽曲コンペが主流で、一つのコンペに100人以上が参加するケースも珍しくありません。

 採用を勝ち取るのもかなり大変ですし、コンペ参加に対しては制作費は出ないので採用されなければ、基本的にタダ働きになってしまいます。

 また、採用されても曲がヒットしなければ、分配は雀の涙程度。大ヒットの夢があるとは言え、アーティスト業同様、相当に厳しい世界だと思います。ただ、勝つコツを掴んで結果を出し続けている作曲家がいるのも事実で、最後は実力次第です。

●受注制作

 クライアントから依頼を受けて曲を制作。成果物の納品し、報酬を受け取ります。ほとんどの場合、買取契約であり、納品後の曲は自分の物になりません。フリーランスの場合、報酬額は交渉次第です。

 ゲーム会社や音楽制作会社などに社員として勤務するケースもあります。その場合は、もちろん給料制です。曲の権利は会社の物となります。

 収入が安定する、大規模な案件に参加できる、制作のノウハウを現場で学べる等のメリットはありますが、著作権を持つ事が出来ないので、働いた分の報酬しか得る事が出来ません。ある程度、制作会社に勤務したあと独立する音楽クリエイターも多いです。

ストックオーディオビジネス

クライアントからの依頼ではなく、自分発信で曲を作りストックした曲をライセンスする事で稼ぎます。

著作権の扱い方により、大きく3種類に分かれます。

  • ロイヤリティフリーストックオーディオビジネス
  • 著作権フリー音楽による広告・物販ビジネス
  • Production Music ビジネス

●ロイヤリティフリーストックビジネス

 まず大前提として、ロイヤリティフリー著作権フリーの違いですが、ロイヤリティフリーは、最初に使用料を支払い、契約の範囲内に限り、追加の支払いや使用許諾の必要が無い音楽の事です。

 通常、音楽クリエイターが曲をロイヤリティフリーストック音楽サイトに登録して、ウェブ上でライセンスを販売します。サイト側の手数料を差し引いた額がクリエイターの報酬となります。

 ライセンス料は2500円位〜と、かなり安価ですが一旦登録してしまえば、同じ曲のライセンスを複数の人に同時に販売可能で、販売や管理はサイトの方でやってくれるので、良いサイトに良質な曲をたくさん登録する事でカタログが資産になっていきます。

国内では

Audiostock

海外では

Audiojungle /Pond5

などが有名です。

ストックオーディオビジネスに関してはこちらもどうぞ↓↓

著作権フリー音楽による広告ビジネス

 著作権フリーは曲の著作権そのものを放棄するという意味です。使用許諾、使用料などを気にする事無く、自由に利用する事が出来ます。

 ただし、曲をどう扱うかの裁量は作曲者にあるので、使用方法に条件を付ける事は可能です。(私のYoutubeチャンネル“Syncman’s No Copyright Music”では、クレジットとチャンネルへのリンクの掲載を条件に著作権フリーとしています。)

 著作権フリーにする、一番のメリットはその拡散性です。多くの映像系クリエイターが自身のプロダクト用にBGMを必要としていますが、他人の曲を勝手に使用する事はできません。そのため、ロイヤリティフリー音源のライセンスを購入するか、著作権フリーの音楽を利用する事になります。

 ロイヤリティフリーはコストがかかるので、著作権フリーの音源が重宝されます。音楽クリエイターにとっても、曲を聴いてもらえる機会やアクセスを増やす事ができるので、それを別のプロダクトの販売につなげる、もしくは集めたアクセスで広告収入を得るなどのマネタイズが考えられます。

 今後、5Gが普及するに従って、動画コンテンツが爆発的に増加する事が予想されるので、結構、将来性がある分野だと、個人的には考えています。

Syncman’s No Copyright Musicの曲を一覧にまとめました。

Production Musicビジネス

 最後に、Production Musicビジネスです。

 楽曲をサイト上のカタログに登録していくのはロイヤリティフリーと同じですが、著作権の取り扱いの点で大きく違いがあります。


 Production Musicビジネスで曲を送る先はProduction Music Libraryと呼ばれるタイプの音楽出版社です。
 自社のウェブサイトに作曲家から預かった曲を登録するのはロイヤリティフリーサイトと一緒ですが、Libraryでは預かった曲をP.R.O(JASRAC, ASCAP, BM等)に登録します。 

 曲の使用者にはCue sheetと呼ばれる報告書を著作権管理団体に提出する事が義務付けられています。それにより著作権使用料が計算され、作曲家と音楽出版社に分配されます。

とても大事な点になりますが、Production Musicビジネスに於いては、

⚖作曲家の利益=Libraryの利益⚖

という構造になっていることに注目してください
 
曲が使用されるたびに、クリエイターと同額の利益がライブラリ側に使用料として入る仕組みになっているので、ライブラリ側も預かった曲をサイト上のカタログに登録するだけではなく、映像制作会社等に全力で売り込みをかけてくれます。

クリエイターLibraryはわかりやすいWin-WIn関係になっています

ロイヤリティフリーサイトとProduction Music Libraryの比較 

売り込み方の違い

 ロイヤリティフリーサイトでは、曲がライセンスされた時点で一回限り収益が発生します。運営側は売り上げの一部を手数料として得る仕組みです。曲あたりのライセンス料が少額なため、たくさんの作曲家を抱えてカタログ全体から薄く広く利益を得る形になっています。一般にロイヤリティフリーサイトは楽曲の審査が通りやすく誰でも簡単に参入できますが、サイト側の利益とクリエイター個人の利益はかならずしも一致していません。

 一方、Libraryの場合、ライセンスされた曲が使用される限り、P.R.Oから繰り返し楽曲使用料の分配を受け取る事ができます。

 そのためにLibraryには売り込み専門のスタッフがいて、預かった曲がなるべく多く、良いプレイスメントが得られる様、クライアントに営業をかけてくれます。

 その性質上、スタッフが扱える量の曲しか契約しませんので、Libraryとの契約はロイヤリティフリーサイトに比べるとかなり狭き門になっています。また楽曲の権利トラブルを避ける為に、曲ごとにしっかりとした契約書にサインをする事になります。

クライアントの違い

 ロイヤリティフリーサイトの主な顧客は個人の動画クリエイターなどで、YouTubeなどのウェブメディアやコーポレートビデオなど公開範囲が限定された用途が多く、制作予算が少ないクライアントが多いです。安価で手軽にライセンスを購入できる仕組みが支持されています。

 Production Music ビジネスは多くの場合、ケーブルTV局やラジオ局、映画制作会社、ゲーム会社などの放送業界が主なクライアントになります。一般に制作予算が潤沢な会社が多いです。ゆえにTVドラマ、ドキュメンタリー、ニュース番組など認知度の高いコンテンツに楽曲がライセンスされる可能性がグッと高くなります。

 これら広くパブリックにコンテンツを公開することを目的とした業態の放送局などには、Cuesheetの提出が法律で義務付けられており、コンテンツに使用した楽曲の情報をPROに報告して、著作権使用料を支払います。

PROについてはこちらから↓↓

これが無名の作曲家である私が海外ドラマ、ニュース番組等に楽曲提供を行える理由です。

まとめ

 私は上述のビジネス形態の中で、音楽制作会社の社員以外を全て経験してきました。現在進行形でやっているのはProduction Musicビジネス著作権フリーの楽曲を公開するYoutubeチャンネルです。

 ロイヤリティフリー音楽は現在、新たに作っていませんが、過去に作った曲がサイトに200曲ほど登録してあり、年間20万円くらいは何もしなくても入ってきます。

 楽曲コンペは5年ほど全くやっていませんが未だに、お付き合いのあったマネージャーさんからお話を頂くことがあります。また6年ほど前にリリースされた数曲分の印税が年間数万円程度入ってきます。これは楽曲提供したアーティストさんが現役で頑張ってくれているおかげです。

 現在、私は楽曲から得られる収益のみで生活していますが、収入の大半はProduction Musicビジネスからです。

 一般的に”音楽では食えない”と言われていますが、音楽ビジネスは可能性を秘めていて、過去に作ったものがそのまま資産として残り、繰り返し利益を生み出してくれる点です。

 その意味で、現時点で最も資産性が高く、表現者としても満足の行く作品を作り続ける事ができるのがProduction Musicビジネスです。

Production Musicビジネスについてはこちらの記事もどうぞ↓↓

 著作権フリービジネスにも将来性を感じていますが、今のところ収益化には至っていませんので今後に期待です。

 以上、ミュージシャンが楽曲からお金を稼ぐためのビジネスモデルのまとめでした。