ストックオーディオビジネスの解説

ストックオーディオビジネスの解説

ストックオーディオビジネスとは

 本記事では作曲家が収益を得る方法の一つ、ストックオーディオビジネスの解説をします。


 特定のクライアントに対してではなく、一般的な音楽ニーズを予測して曲を書き、ウェブサイト上にカタログ化してライセンスを販売するビジネスです。音楽を必要な人が、サイトにアクセスし音源を試聴して気に入ったら使用ライセンスを購入する仕組みです。
 
 世の中にはこの様なサービスを提供するサイトが沢山あって、多くの作曲家が登録をしています。

著作権フリーとロイヤリティフリーの違い

ストックオーディオサイトの多くがロイヤリティフリー形式でのライセンス販売を行っています。著作権の取り扱いで混同しやすい言葉として
 ・ロイヤリティフリー
 ・著作権フリー
 ・パブリックドメイン
の3つがあるので解説していきます。


・ロイヤリティフリー
 本来、他人の楽曲を使用するにはその都度、著作権者の許可を得て、
楽曲使用料を払わなければなりません。しかし、ロイヤリティフリーの曲は、最初に任意の額を支払えば使用許諾、使用料無しで使えます。使用のライセンスを与えるだけなので、著作権は作曲者が保持します。


・著作権フリー
 著作権フリーとは、作曲者が本来持っている著作権を完全に放棄して使用者に対して財産権に関する一切を主張しないという事です。

ただし、著作権の中には人格権があり、譲渡ができないため、その楽曲が作曲者の物であることに変わりはありません。なので他人がその楽曲をさも自分が作ったかの様に振舞う事は認めていません。著作権フリー楽曲の多くがそのまま音楽作品としての販売、再配布を認めていません。

・条件付き著作権フリー
その曲を著作権フリーにするかどうかの判断は、作曲者に委ねられます。条件に従う限りは著作権フリーといった形をとっている作品もあります。
ちなみに、私も著作権フリーの音楽を提供するYouTubeチャンネルを運営していますが、クレジットのとチャンネルへのリンクの記載を条件に著作権フリーでの楽曲の使用を認めています。


・パブリックドメイン
 著作者の死後、長い期間が経過して著作権が失効した作品の事です。多くのクラシック音楽がパブリックドメインです。

 ただしパブリックドメインであってもアレンジした作品には著作権が存在したり、レコーディングされた音源の使用に関して、音源制作者が持つ原盤権、演奏者が持つ著作隣接権という権利が存在します。

また、著作権が失効する期間は作曲者の没後50年でしたが、2018年に著作権法が改正され70年に延長されました。

 利用する際は、その楽曲が本当にパブリックドメインで、他人の権利を侵害していない事を確認するようにしましょう。

ストックオーディオサイトを利用するメリットとデメリット

メリット
・どんな曲をどんなペースで制作するか自分の裁量で決められる。
・登録曲数が増えていくと自動で収益が出る様になる。
・比較的、審査が緩めなので初心者が参入しやすい。
・在宅、DTMで出来る。

デメリット
・1ライセンスあたりの料金がかなり低く抑えられている。
・それなりの手数料をサイト側に持っていかれる
・価格、売れ行き、ライセンスポリシーなど様々な事が、サイト側の事情に大きく左右される。

代表的なストックオーディオサイト

国内

 国内ではほぼ一択ですね。外部のフリーランス作曲家が楽曲提供できる仕組みがあり大々的に展開しているのはここだけだと思います。当然の事ながら、ほとんどの作曲家が日本人なので、日本的なサウンドやアレンジの物が充実しています。楽曲の審査もそこまで厳しくないので初心者が参入しやすく、オススメです。

 最近はTiktokなど様々なコンテンツへの楽曲提供の他、国内のProduction Musicなど意欲的な取り組みをしている様です。

海外

 オーストラリアのEnvatoという様々なデジタルコンテンツのライセンス販売している会社のロイヤリティーフリー音楽部門です。サイトは英語です。
 恐らく業界最大手で20000人以上の作曲家が登録しています。(全員がアクティブではありません)トップの作曲家だと数億円以上稼いでいる人もいます。サウンドの傾向としては洋楽色が強いので、日本的なサウンドだと審査を通り辛いかもしれません。コミュニティが活発でEnvato内で活動する他業種のクリエイターに曲が購入されることもあります。最も曲が売れやすいサイトだと言えます。

私も以前、取り組んでいました。その時は審査もかなり緩い印象でしたが、最近はかなり厳しくなり、提出出来る曲数に制限があったり競争が激化している印象です。

 Audiojungleと並ぶ業界の大手です。同様に音楽以外のデジタルコンテンツも販売しています。サイトは英語です。
 突然、特定の曲がまとめて売れたり、パタっと売れなくなったりとトレンドの影響が大きく、安定感を欠きますが、サイトの規模が大きいのでしっかりコミットすればそれなりの売り上げになります。楽曲の審査はAudiojungleよりは緩い印象です。

 私は両方に同じ曲を200曲登録していて。Audiojungle:Pond5の売り上げ比率は4:1ぐらいです。

契約の種類

 ストックオーディオサイトには大きく分けて2種類の契約形態があります。

・独占契約(Exclusive Contract)
サイトに登録した曲は他のストックオーディオサイトで販売する事が禁止されます。

非独占契約(Non-Exclusive Contract)
同じ曲を他のサイトで販売したり、自分のホームページで公開する事になんの制約も受けません。

 上のAudiojungleとPond5の比較でお気づきかもしれませんが、私は2つサイトに同じ曲を登録しています。これは私と2つのサイトとの契約が非独占契約だからです。こうする事で複数のライブラリで売り上げ等、比較しながら販売して行く事が可能です。

 契約違反を発見された場合、サイトのアカウント停止、最悪の場合は、訴訟を起こされるリスクもありますので、規約はしっかり遵守してください。

ここで解説した独占・非独占の解釈はあくまで一般的なものです。詳細は、各サイトのルールをよく確認する事をお勧めします。

Production Music ビジネスとの関係

 本ブログで主に扱っているProduction Music ビジネスも楽曲を提出してMusic Libraryにカタログ登録する点では、広い意味でストックオーディオビジネスだと言えます。しかし、著作権の取り扱いの点で大きな違いがあります。   

 Production Musicビジネスでは、一般的な音楽出版物(レコード会社所属アーティストの作品等)と同様に著作権管理団体に楽曲を登録して使用ごとの著作権使用料を徴収します。

■簡単にいうと
 ○ロイヤリティフリー→ライセンスを販売してその後の使用料を受け取らない
 ○Production Musicビジネス→曲が使われる度に使用料を受け取る
といった感じです。

著作権と著作権管理団体に関してはこちらの記事で解説しています↓