Production Music ビジネスに向いている人って?

Production Music ビジネスに向いている人って?

こちら私のTwitterのプロフィールです。

 ここにも書いてある通り、私は音楽業界やテレビ業界に特別なコネを持っていない無名の作編曲家です。そんな私が在宅DTMでアメリカの音楽出版社と契約して、海外の有名テレビ番組に楽曲提供をして生活しています。

 私はこれをProduction Musicビジネスと呼んでいますが、必要なのはDTM環境とインターネットのみです。物理的な参入障壁は全く無く、DTMで曲が作れれば、ほぼ誰でも在宅で参入できます。

 それでは、誰でもこのビジネスで成功する事が可能でしょうか?この記事ではそのあたりを解説していきたいと思います。

Production Musicビジネスに向いている人

 まずはProduction Musicビジネスに必要な条件を確認しましょう。

  • ブロードキャストクオリティの曲を制作できる
  • 高校卒業レベルの英語が理解できる
  • 納期を守る。メールを素早く正確に返信するなど、基本的なビジネスマナーを守れる
  • ハイクオリティな楽曲を早いペースで継続的に作り続けられる

ブロードキャストクオリティ、英語力についてはそれぞれ別記事にて解説しています。

ビジネスマナー

  打ち合わせや契約等のやり取りは、ほぼ全てオンラインで行われますが、クライアントや音楽出版社など、実際の人間とのコミュニケーションで進めるビジネスなので基本的なマナーは必須です。

 ちなみに納期と書きましたが、Libraryから制作依頼を受けた時以外は、Production Music ビジネスに納期は無く、出来た曲から提出していくスタイルですので、約束事をしっかり守るという意味で解釈して下さい。

曲の質、制作スピード、継続性

 これがもっとも大事です。

どれだけ強調しても足らないくらいなのですが

Production Musicビジネスは成果が上がるまで長い時間がかかり、日々、黙々と楽曲を作り続けなければならないビジネスモデルです

 始めて1、2ヵ月くらいでパパッと成果が出たり、作った曲のうち一曲が大ヒットして一夜にして大金持ちに、みたいな事は決して起こらないので長いスパンで取り組む覚悟が必要です。

やる気と音楽に対する情熱

 ただし現状でこれらの条件を全て満たしていなくても大丈夫です。大事なのは必要なことを学んで行くやる気です。音楽への情熱がある人に、有益な情報を提供したいという想いで記事を書いています。

Production Musicビジネスをオススメしない人

 逆に、Production Musicビジネスをやる事をオススメしない人は

  • 音楽は芸術なので商品のように扱われたくない
  • 有名になりたい(知名度や影響力を得たい)
  • 今すぐ稼ぎたい
  • 楽に大きく稼ぎたい(一発当てたい!)

という考え方の人です。

芸術として曲を作っている

 音楽ビジネスは、世界的に見てもそれなりに規模が大きな市場です。ただ、そのメインプレイヤーであるミュージシャンはアーティストとして表現することを目的に生きている人達なので、常にアートとビジネスのジレンマが存在する複雑な世界とも言えるでしょう。

 しかしビジネスという以上は、なんらかの商品やサービスを提供する必要があります。Production Musicビジネスで提供するのはテレビ等でBGMとして使える楽曲のライセンスです。

 アートとして音楽を作っていて少しでも納得の行かない物は世に出したくない、という人がやってもストレスを感じるだけなのでまったくお勧めしません。

 だからと言って質の低いものを作って良いと言う事ではなく、クライアントやProduction Music Libraryが契約したいと思う曲を、彼らが必要なタイミングで提供していく事が求められます。

 大事なのはあなたにとって良い作品では無く、クライアントにとって(業務上、都合の)良い曲であると言う事です。

 もちろん自分にとっても最高である事が素晴らしいですが、Production Musicビジネスでは楽曲を少しでも多くLibraryのカタログに送り込み、権利を譲渡する事を繰り返す中で利益をあげていくので、音楽制作をある程度、仕事と割り切れない人にはキツイでしょう。

 一方で、特定のクライアントからの委託仕事と違い、制作するジャンルや雰囲気、又は作るタイミングをある程度自分で決めることができるという側面もあります。インスピレーションに従って曲を作れるというのは作曲家にとっては素晴らしい事だと思います。

知名度や影響力を上げたい

 Production Musicでは作品中にクレジットを載せてもらえる事は、ほとんどありません。楽曲が使用されてもあなたの名前がTV画面に出る事は無いので、この業界で何年活躍しても有名にはなれません。(業界での信用は大いに高まると思いますが)

 裏を返せば知名度や実績、年齢、性別、国籍、人種などの要因で差別されないので音楽さえ良ければ、誰にでも平等にチャンスがあるとも言えます。

今すぐ稼ぎたい

 Production Musicは最初の成果が出るまで非常に時間が掛かります。仮に今日、最初の曲を作り始め、順調に契約、TV番組で使用されたとしても、最初の楽曲使用料を受け取れるのは、早くて半年から1年後だと思った方が良いでしょう。

 曲を書き続けて印税で生活が成り立つ様になるまでに、最低でも200曲以上はLibarayとの契約している状態にならないと難しいでしょう。年間100曲作ったとしても2年ほどかかります。

 ただし良い点も沢山あります。そのくらいまでカタログが大きくなると、作業効率が格段に上がって、短期間により多くのハイクオリティな楽曲を制作できる様になり、結果、利益が大きくなります。

 また業界での信頼も高まり、Libraryから単価の良い決め打ちの仕事(Custom Work)を受注できる可能性が高まります。

 そして一番大きいのが、過去に作った曲が繰り返し利益を生み出してくれるので、世に言う不労所得に近い物を獲得する事も可能です。ただし、その後何もしなくても維持できる訳ではなく、新たな曲を提出し続けないと収入は時間と共に減っていきます。

楽して稼ぎたい(一発当てたい!)

 まず強調したいのはProduction Musicビジネスは音楽業界に伝統的にある、
”書いた曲が大ヒットして一夜のうちに億万長者に”のようなシンデレラストーリーとは無縁です。

 大量の曲をとても早いペースで仕上げ、権利をLibraryに譲渡することを繰り返し、少しづつ受け取れる印税が増えて行きます。音楽制作、契約書などのペーパーワーク、市場のリサーチなどやるべきことが怒涛のようにありますし、それをずっと継続する必要があります。ただしハードワークすれば、報酬少しづつ増えていきます。

公正な対価と成果の積み上げ

 労働の対価として報酬を受け取り、継続して行く事で、だんだんと報酬が増えていくと言うのは会社員の方には、当たり前の流れかも知れません。

しかし創作を生業にしている方には共感して頂けるかもしれませんが、

仕事に対して公正に対価を受け取り成果を積み上げて行けるというのは創作の世界ではとても稀な事ですよね?

 私は音楽業界の事しか分かりませんが、仕事をする際に契約書を書かないのは
普通だし報酬額が受け取るまで分からないなんてのも日常茶飯事です。

 これは完全にアウトな例ですが、ギャラの不払いや、そもそも請求先が会社ごと消滅した(?)なんて話も仲間内で聞いたことがあります。

 一方、Production Musicビジネスでは楽曲を使用した場合、放送局はCue Sheet と呼ばれる使用報告書を著作権管理団体に提出する事が法律で決められており、あとはルールに則ってP.R.Oから権利者に楽曲使用料が分配されます。
 誰かがあいだに入って作曲家の報酬を不当に搾取する様な事が起こりにくい透明性の高い仕組みになっています。

  Libraryとの関係に於いても、1曲ごとにきっちり契約書にサインをしていくので、公正な契約を結ぶ事さえ出来れば、著作権者としてのあなたの権利は保証されます。こういった公正さこそがProduction Musicビジネスの魅力と言えるでしょう。

まとめ

 Production Music ビジネスでの向き不向きを解説してきました。音楽制作力、継続性、英語力、そしてビジネスマナーなど。色々とハードルが高いと感じたのでは無いでしょうか?

以前にこのようなツイートをしました。

 実際、Production Music ビジネスは誰にでもできて、簡単にすぐに稼げる様なビジネスではありません。しかし、音楽制作に情熱を注ぎハードワークすればそれに見合った対価を得られ、それを積み上げていけます。

 国内ではProduction Musicに関する情報はまだまだ限られていますが、海外では、フリーランス作曲家の主要な収入源として広く認知されています。日々、多くの作曲家が参入しているのは間違いありませんが、Libraryとの契約がそれなりに狭き門なのと、収益が上がるまでに時間がかかる為、大半が1年以内に脱落しているように思います。

 市場規模はそれなりに大きく、さらに近年、成長している中で本気で音楽を作って生活する覚悟のある人しか継続できないので、結果、作曲家の供給過多にはなっていない印象です。

 大変ですが、音楽が大好きで毎日、曲を書いて生活できたら最高だと思える人なら挑戦してみる価値はあると思います。