TV/Film等にライセンスされる為に必要な曲のクオリティ
- 2020.01.27
- Production Musicビジネス徹底解説
- テレビ BGM, テレビ BGM 仕事, テレビ 作曲家, テレビ 音楽
TV/Film等にライセンスされる為に必要な曲のクオリティ
ビジネスの基本は、良い商品、サービスを作ることです。それではProduction Music Composerの提供するサービスとは何でしょうか?言うまでもなく楽曲です。ハイクオリティな楽曲を作る事が何よりも大事です。
クオリティが低ければ、まずLibraryと契約してもらえないので、ビジネスの入り口に立つことができません。運良くLibraryのカタログに曲を登録できても実際、使用楽曲を決めMusic Supervisor (音楽監督)が雰囲気が近い候補曲を何十曲も並べて比べるので、その中でクオリティが著しく低いとやはりそこで弾かれてしまいます。
ハイクオリティな曲の条件とは?
この記事を読んでいる方で、
”私は誰よりもクオリティの高い曲が作れます✨”
と、自信を持って言える人は少ないと思います。
私も絶対に言えません(笑)
また音楽の好みは極めて主観的で、一方向から優劣をつけるのは難しい側面があります。ここではTV番組にライセンスされやすい曲と言う面に限定して、ハイクオリティ楽曲の条件を挙げて行きます。
ここで言うハイクオリティというのは、楽曲の芸術的な質の高さではなく、テレビなど一般視聴者が不自然さを感じないレベルの音楽であるという事です。
Production Music の役割は、視聴者が番組の内容に感情移入する手助けをする事なので、独創的な楽曲展開、目を見張るようなテクニック、難解なコード進行といった高度で特殊な音楽的技術は必要とされません。
映像の意図をより分かりやすく伝えるためにセリフやシーンに寄り添い邪魔をしない楽曲と音質の曲がハイクオリティの曲と定義します。
以上の条件をまとめると:
- ミックスやマスタリングなど技術的な部分がTV等で流れている曲と同等以上の品質。
- 意図しない不協和音、不自然なメロディー、コード進行など一般視聴者が違和感を感じる要素が無い曲。
- ジャンル、テンポ、キー、雰囲気などに統一感があり、映像が必要としている感情表現をサポートできる曲。
といった感じになります。
聴きやすい音質のミックス
上記の条件のうちミックス/マスタリングに関しては、一般的に配信されている音源と同等の品質が求められます。
ミックス、マスタリングでよくある失敗例
よくあるミックスの失敗例としては
- 音割れしている。
- 音量が小さすぎて音圧が感じられない。
- 特定の音域が大きすぎる、もしくは小さすぎる。バランスが悪い
- 各帯域、定位の設定が悪く分離が悪くごちゃごちゃしている。
- コンプレッサーがかかりすぎて抑揚が潰れている。
- リバーブがかかりすぎてお風呂状態
- 各楽器の定位が悪い、空間系をかけすぎてステレオ感が乏しい。
- もしくは 広がりすぎて真ん中がスカスカ。
等です。特に1〜4が致命的で、
- そのような曲を聴きたい人は誰もいないので問題外。
- 極端に小さいと、第一印象で音圧が低くショボく聞こえます。とにかく大きければ良い訳ではありませんが、適切な音圧が必要です。基準は市販の音源になりますが、最近のポップスほど、マキシマイズする必要は無く、パッと聴いて小さい、と思わなければ大丈夫です。(Libraryによっては提出された曲をマスタリングし直すところも結構あるのであまり神経質になる必要はありません。)
- 特に高域はセリフやナレーションの邪魔になりやすいので、アレンジの段階から普通の音楽制作よりも、その帯域を若干下げた方が良いでしょう。具体的には、1khz〜5khz周辺です。もちろん曲によりそれぞれですが。
- ごちゃごちゃしたミックスはセリフの邪魔になるので、定位などを適切に処理してスッキリとしたサウンドにすると良いです。3.にも共通して言える事ですが、ミックスだけでなくアレンジの段階から各帯域、定位を整理する事が大事です。
自然なハーモニー、メロディ、コード進行
何を持って自然とするかは人それぞれなので難しいですが、基本的な音楽理論や、普段、聴いている音楽の仕組みから大きく逸脱している音は、多くの人が共通して違和感を持ちます。芸術としての音楽なら可能性に挑戦するのはアリですが、Production Music では事情が違います。
違和感を持った部分というのは曲の中で浮かび上がって、かなり強い印象を残します。その結果、映像のサポートという役割を外れ、邪魔になってしまう可能性があるのでProduction Music では避けるべきです。
ただし、そういった違和感を必要とするシーンもあるので全く需要が無いとは言えません。
統一性のあるリズム、スタイル、感情表現
Music Supervisorが曲を選ぶ時、まずシーンのコンセプトがありMusic Libraryのカタログからイメージに合う曲を探します。その時に、様々なキーワードを想定してたくさんある曲の中から絞り込んで行きます。
例を挙げると
- CSIの様な犯罪捜査ドラマ : ”Dark”, “Investigative”, “Mystery.
- スポーツニュースのBGM: “Rock”, “Powerful”, Energetic”.
- 恋愛ドラマなら: “Romantic”, “Heartwarming” “Love”
といった感じです。
そこで前半が激しいロックで、途中シンセをフィーチャーしたテクノ、最後は優雅なジャズといった具合にスタイルやリズムがコロコロ変わる曲、または悲しげなイントロで始まりサビでハッピーなロックになるといった感じで感情表現が統一されていない曲はアート作品としては面白いかもしれませんが、Production Musicとしてはとても使い勝手が悪くなります。
また前述の違和感の部分と共通しますが、テンポチェンジや転調などもかなり劇的な変化をもたらすのでProduction Musicではほとんど使われません。
Music Supervisorが検索するであろうキーワードを想像して、一つのジャンル、雰囲気、キー、テンポにターゲットを決めて曲を書く事をおすすめします。もし可能なら想定される使用されるシーンをあらかじめイメージして書けると素晴らしいです。
統一感≠ループ
統一感が大事だと書きましたが、これは4小節とか8小節を延々とループする曲やミニマルなサウンドという事ではありません。
時間と共に変化していく映像に合わせて、曲も展開していくことが大事で、少しづつビルドアップして行ったり、各セクションの切り替えがわかりやすいトランジションやブレイクを取り入れて楽曲としてドラマチックに展開していく事が重要です。
これは、Production Music の肝になる大事な部分なので別記事で、解説してて行きます。
自分の曲のクオリティをチェックする方法
概念としてのハイクオリティな曲についてはは分かって頂けたと思います。しかし、音楽は実際の音が大事なので、理屈が分かっただけでは、自分の曲が十分にハイクオリティなのか判断するのは難しいと思います。
そこでどうするかと言うと、まずはテレビを見ましょう。
今はネットフリックス等のおかげで海外のコンテンツも簡単に視聴できますから、番組を見て実際に使われている曲を自分の曲と比較してみましょう。
もしあなたの曲が番組内の他の曲と同等以上のクオリティがあると感じたら、あなたの実力は既にProduction Musicビジネスに参入できるレベル達していると言えます。すぐにLibraryを探しましょう。また、この作業でなんとなくトレンドも掴めると思います。
ただし、このやり方には難しい面もあって、音楽の音量が小さくがセリフや効果音の後ろに隠れて細部まで聞き取れないという問題があります。これはProduction Musicの役割を考えたら当然の事です。
そこでどうするかというと、自分が契約したいProduction Music Libraryのカタログの曲を聴いてみる事をお勧めします。
多くのLibrayで契約済みの曲をオンラインで聴ける様にしています。Music Supervisorも実際にこれを聴いて選曲するので、実践レベルのクオリティをチェックするのに最適です。
Production Music Libraryに関しては、Google等で調べて、自分にあったLibraryを探して頂きたいのですが、いくつか大手のLibraryを挙げておきます。
ちなみに、初心者が大手Libraryといきなり契約するのはかなり難しいです。経験豊富な作曲家が多く、クオリティもProduction Music全体の平均値よりもずっと高めです。これを聴いて圧倒される必要はありませんが、通常は小規模なLibraryと契約して実績と経験を積んでいくことをお勧めしています。
なお、Libraryを探すのが難しいというご意見をたくさん頂いており、その声に答える為、ブログよりもう一段踏み込んでProduction Musicビジネス参入をサポートする記事、”Production Musicビジネススタートアップガイド”をnoteの有料記事として公開しています。
その付録として90社を超えるLibraryの連絡先をまとめたリスト”Production Music Library Directory“がついています。
必要な方はこちらを参考にしてください。
制作事例と共に具体的なProduction Musicの作り方の解説した記事はこちら
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