Production Musicビジネスで 先に貰えるお金と後で貰えるお金

Production Musicビジネスで 先に貰えるお金と後で貰えるお金

 このブログを開始して以来、Production Musicはフルタイムの仕事にできるポテンシャルがあるものの成果が出るまでとても時間がかかると書き続けてきました。

もう一度まとめると

  • Production Music業界の仕組みを理解し、PROに加入等の準備(2週間)
  • 曲作りを開始。まずは10曲ほどを目標に(1ヶ月)
  • Libraryに曲を送りPublishing 契約を結ぶ(1ヶ月)
  • 契約した楽曲がLibraryのカタログに載る(3ヶ月)
  • 楽曲がプレイスメントされる(1ヶ月)
  • 最初の著作権使用料が支払われる(通常、プレイスメントから9ヶ月後)

 まず一番最初の著作権使用料を受け取るまでにこのくらいはかかるのが普通です。しかも、最初の支払いで得られる金額はほんのわずかでしょう。

 ここから継続して曲を書き続けて契約数を増やす必要があります。楽曲制作のペース、契約するLibraryの質、プレイスメントの質と量は人によって千差万別なので、明確な数字を示すのは難しいのですが、このブログでは私個人の経験から、最低でも200曲契約というのを一つの指針にして記事を書いています。

  • 年間100曲制作したとして2年
  • 200曲契約後、すべての登録が完了し楽曲がプレイスメントされてから支払いまでの時間 (半年から9ヶ月)

として、最短でも開始から2年から3年くらいの計画を考えた方が良いでしょう。

 契約曲が増えていくに連れて、PROからの3ヶ月ごとの支払いの度に少しづつ著作権使用料の額が増えていくはずです。これによってProduction Musicビジネスの活動が正しい方向に向かっていると確認できます。

 様々な社会情勢や業界の流れにより前回より落ち込んでしまう事は考えられますが、より大きな視点でみた時に緩やかに右肩上がりになっている事が大事です。

 さて、とはいえこれだけ時間とエネルギーを注いで曲作りをしても十分な成果が出るまでに3年近くかかると聞かされると、新たに取り組む事に及び腰になってしまうのでは無いでしょうか?

 もちろん、他に収入源を確保しながらProduction Musicを副業としてやっていく道もあると思います。長期的に取り組む事で少しづつ収入を増やしていく事は十分に可能だと思います。

 しかし、このブログでは将来的にProduction Musicをフルタイムで取り組み、著作権使用料のみで生きていくLife Styleを目指す方向けに発信しているので、その方向性で話を進めたいと思います。

Upfront PaymentとBackend Royalty

 ここまで書いてきたお金の話は、プレイスメントされた楽曲の著作権使用料としてPROから分配されるBackend Royaltyです。

 これから別のタイプの報酬について解説しますが、Production Musicビジネスを行う作曲家にとって、Backend Royalty が最も重要な収入源である事を覚えておいてください。

 上述の通り、Backend RoyaltyはLibraryとの契約、カタログ掲載、プレイスメント、Cue Sheetの提出等、多くのプロセスを経たのち、9ヶ月後に支払われる上、PROの支払いは3ヶ月ごとである為、報酬を得るまで、とても時間がかかります。そしてプレイスメントが海外で発生した場合などは、さらに3ヶ月から半年くらいの遅れが発生します。

 金銭的に余裕のある方は良いですが、そうで無い場合には、この生活が数年単位で続くのはかなりの負担になると思います。

 そこでBackend Royalty以外に、より早く受け取れる報酬について解説していきたいと思います。業界では、Backend(後払い)に対してUpfront(前払い)などと呼んだりします。

Upfront Paymentの種類

 Upfront Paymentには複数有り、多くはLibraryから作曲家に直接支払われます。

それぞれのPaymentの詳細はこちら↓の契約に関する記事にて解説していますので参考にして下さい。

Consideration Fee

 おそらくこれが最速で受け取れる報酬です。いわゆる契約金の様なもので、曲がアクセプトされた後、契約時にLibraryから支払われます。相場は$50から$500の間くらいです。そんなに大きな額ではありませんが、毎月10曲契約できるとしたら、少なくとも$500の収入にはなるので、結構ありがたいですね。

 残念なのは近年、Consideration Feeを支払わない契約を求めるLibraryが非常に多い事です。比較的、大手のExclusive Libraryは支払ってくれるところが多いですが、中小規模のLibrayでは支払ってくれる所を探す方が難しいくらいかもしれません。

 Consideration Fee無しの契約でも、長期的にみて上質なプレイスメントを沢山獲得してくれれば、十分な収益が出るので、個人的にはConsideration Feeの有無でLibraryの契約を判断しない方が良いと思いますが、先払いの収入が無いと生活が成り立たない場合は、Consideration Fee有りのLibraryを優先的に探すのも良いかもしれません。

 ちなみにLibraryのウェブサイトにはConsideration Feeに関する記述はまず書いてありませんので、デモ音源の返事が来てから、契約前に担当者と交渉を行う事になります。

Sync Fee

 Sync Feeは楽曲がプレイスメントされた時にLibraryとクライアントの合意により、クライアントからLibraryに支払われるお金です。契約により作曲家は金額や可否に口出し出来ません。Libraryが受け取ったお金は契約書に定められたパーセンテージで作曲家に分配されます。

 比率は50:50を割り込まないのが望ましいと考えていますが、契約書により様々です。

 支払われるタイミングは、Libraryの会計期によります。通常は年2回、6月末と12月末、そこから60日以内というのが多いです。

 金額の相場の様なものは存在せず$100以下から例えばハリウッドのトレイラーなどでは$10,000を超えるケースもあります。ただし、映画でのプレイスメントではTV/Radioとは違うルールが適用されて、高額のSync Feeを支払うかわりにBackend 無しというケースも多いので、単純に金額だけでの比較は難しい所です。

 契約によっては、Sync FeeをLibraryが総取りするケースもありますが、契約時、一回限りの支払いのConsideration Feeに比べて、プレイスメントごとの報酬で、金額も大きくなるSync Feeに関しては可能な限り50:50での契約を結ぶ事が望ましいです。

Blanket License FeeとDirect License Fee

 どちらもクライアントから直接、LibraryにLicense Feeが支払われ、PROからの分配が行われないLicenseの形態です。詳しくは、上に示した記事でご確認下さい。

 作曲家への分配はSync Feeと同じで各契約書ごとに設定されます。傾向として、Blanket License Feeは作曲家に分配されない契約も多いです。

 一方、Direct License は、プレイスメントが確定後、即座に支払われるケースが多いです。Libraryにもよりますが、Paypalなどで支払いが行われます。

 基本的にはSync Feeと同様、Libraryとクライアントの合意により決定され、作曲家は事後的にプレイスメントを知る事になります。

 金額は少ない場合は数十ドル程度の事もありますが、Direct License では以後の著作権使用料を受け取れない為、プロジェクトの規模によっては数千ドル以上に設定される事もあります。

以上の

  • Consideration Fee
  • Sync Fee
  • Blanket License Fee
  • Direct License Fee

が、PROから支払われるBackend Royalty 以外に作曲家が受け取れる可能性のあるUpfront Payment になります。

Upfront vs Backend

 今までの記事でも、何度か書いてきましたが、Production Musicにおける作曲家のメインの収入源はPROから支払われるBackend Royalty です。

 そして3ヶ月ごとに支払われるBackend Royaltyを安定的に増やしていく為に、ハイクオリティでプレイスメントを獲得できそうな楽曲を上質なLibraryに可能な限り沢山、契約する事が基本戦略になります。

 Upfront Paymentの中でも、Sync FeeやDirect License Feeは一度に、それなりに高額の報酬を得られる事もありますが、そう頻繁にある事では無いので、計画の中に盛り込まず、一種のボーナスとして捉えるべきだと考えています。

 一方、契約時にすぐに支払われるConsideration FeeはBackend Royalty がまだ少ないうちは、非常に助けになりますが、Consideration Feeの有無や金額でLibraryの契約を判断するのはあまり好ましくありません。

 貰えるに越した事はありませんが、Consideration Feeが無いLibraryでも上質なプレイスメントを獲得して十分なBackend Royalty を得られるケースは多いので、総合的に判断するべきです。

結論

 Upfront Paymentは初期の活動を継続する助けにはなりますが、最終的にはより多くのBackend Royalty を獲得する事を目指しましょう。

 ただし、近年の業界の流れとしてDirect License のウェイトが大きくなりつつあるという話をよく耳にするようになっています。これはNetflixなどのインターネットテレビの隆盛によるものだと考えます。

 業界は常に変化していくので、プレイスメントの動向を的確に分析して最善のプランを練っていきましょう。

 このブログでも可能な限り、業界の流れをキャッチアップして行きたいと思っています。