楽曲タイトルとメタデータの管理

楽曲タイトルとメタデータの管理

 Production Musicビジネスでは、日々、楽曲制作をしてたくさんの曲を制作する事になります。制作するペースは人それぞれですが、年間100曲以上制作する事もあります。

 多くの楽曲情報を効率的に管理するためには、適切な楽曲タイトル付けとメタデータの入力が重要になります。

 この記事では、適切な楽曲タイトルの付け方とメタデータ管理の方法、そしてその意義について解説していきます。

曲のタイトルを考えるのは大変!

楽曲を制作したら通常の作品と同様に曲名をつけます。ストックオーディオを制作する人の中には、

・Rock1_Uptempo_BPM135

の様にジャンルや曲想をそのままタイトルとする人がいますが、曲数が増えてくると同系統の識別が難しくなるうえ、Libraryとのやりとりにも不向きなので、お勧めできません。では、良いタイトルとはどんなものかを考えていきます。

 まずは曲調、ジャンル、テンポ感、時代感などをタイトルから連想できる単語を含んだタイトルにする事が望ましいです。

例えばロック系の楽曲なら、

・Energy Overflow

・Driving Force

Energy⇨エネルギー
Overflow⇨溢れ出る
Driving⇨ドライブ
Force⇨力

といった具合に、ロックというジャンルが持つ躍動感や力強さを感じさせる言葉を探していきます。

 パッと見て、なんとなく曲をイメージできるタイトルにする事で後々、自分で管理もしやすいですし、Libraryやクライアントにも分かりやすく、効果的にアピールする事ができるのでオススメです。

 クライアントがLibraryのカタログから目的に合った楽曲を探す際に、様々なキーワードを用いて検索をかけますが、曲のタイトルもその検索結果に影響を及ぼす重要なファクターになります。

 それに加えて、Music Supervisorが見た時に、

”どんな曲だろう?”

と興味をそそる様なウィットに富んだタイトル付けができれば、楽曲を試聴してもらえるチャンスがさらに増えるかもしれません。

Libraryによるタイトル改変

 とはいえ、多くのLibraryとの契約ではタイトルの改変を認める内容になっているので、最終的にカタログに載る段階でLibraryが決めたタイトルに改変されてしまう事もよくあります。

 ただし、全く関係の無いタイトルにされる事は稀で、通常は、大文字/小文字を変えられたり、同じ様な意味の別の単語に置き換えられたりといったケースがほとんどです。

 ちなみに、ここでいう改変というのは、

Non-Exclusive Libraryが、既にPROに登録済みの同一楽曲に違うタイトルをつけPROに重複登録をするための改変

とは違い、

Exclusive Libraryが自社のカタログのポリシーにフィットする様に、その曲の固有のタイトルを付け変える事です。

 私はこれまで、1000曲近いProduction Musicを制作してきましたが、正直、毎回、タイトル付けに大変苦労しています。

 母語ではない英語で曲の雰囲気を表すような単語を毎回考えますが、流石にネタ切れ状態で毎回、苦労して言葉をひねり出しています。(どちらかと言えば、曲作りのアイデアを考えるより苦労しているかもしれない(笑))

 最近では、様々な制作分野でAIが取り入れられ始めています。私としては、曲の雰囲気を読み取って納得感のある良い感じのタイトルを付けてくれるAIが欲しいなと思っています。 

 結局の所、最終的なプレイスメントの可否を決定するのは楽曲のクオリティと方向性なので、曲のイメージと合ってさえいればあまり凝ったタイトルを考える必要はないのかもしれませんが、、。

メタデータとは?

 メタデータデータのデータなどと呼ばれています。音楽におけるデータとは音源の事。つまりは音声データです。

 音楽のメタデータとは、収録された音声データについて説明するために付加されたテキストデータの事になります。

 わかりやすい例がI tunesやSpotify などで楽曲を選択すると音声以外に、曲名、アーティスト、ジャンル、スタイル、アルバムタイトル、リリース日等、様々な情報が画面に表示されますよね?

 これは楽曲の制作者や音楽出版社が、配信業者に音源と共にメタデータを提出しているからです。

 リスナーは、メタデータがあるおかげで、好みのジャンルや雰囲気の楽曲を素早く探し出す事ができ、自身のプレイリストを作成する際にもジャンルごと、アーティストごと、雰囲気ごと等、様々な要素で楽曲を並べ替える事が可能になっています。

Production Musicに於けるメタデータの役割

 Production Musicに於いても、メタデータの基本的な役割は一緒です。Music Supervisorが検索をかける際に素早く用途に合った曲にたどり着ける様に、キーワードやディスクリプション、作曲家情報などをメタデータとして付加します。

 作曲家と契約して預かった楽曲にメタデータを付加してLibraryのカタログに分かりやすく登録する事がLibraryのスタッフの重要な仕事の一つです。

 以前の記事で、Libraryに楽曲を送る際はできるだけアルバム形式で、同ジャンルで似た様な用途で使える楽曲を一纏めにして送った方が良いと書きました。その理由の一つが、Library側のメタデータ入力作業を簡略化できる事です。

 作曲家の名前やPROの登録情報もメタデータの一つですし、同ジャンル、同用途の楽曲が一纏めになっている事で、アルバムに収録する楽曲の選曲とメタデータの入力作業の手間を低減する事が可能です。

 Libraryの負担を軽くしてくれる作曲家は、信頼が高まってその後の取引やカスタムジョブを受託できるチャンスがアップします。

相手の立場に立って、役に立つ人材になる事が大事です。

メタデータ作成は誰の仕事?

 これは契約するLibraryによって様々です。ちなみに私が契約しているLibraryは1社を除き、全てのメタデータ入力はLibraryがやってくれています。これは作曲家の為というのもあるのでしょうが、どちらかと言えば、カタログを適切に管理するのが目的だと思います。

 作曲家に任せておいては、スペルミスしたり、ちゃんと曲の雰囲気を説明していないタグを付けてしまったり、そもそもちゃんとしたメタデータを入力していないが為に機会損失に繋がってしまう事もあるので、Libraryが一定のルールの元で全てのメタデータ入力作業を担うパターンが多い様です。

 1社に関しては自分でメタデータ入力をしていますが、概要を説明するための文章のテンプレートがあらかじめ用意されていて、文章に穴埋めの様にメタタグ(キーワード)を入力すると、ジャンルと雰囲気、想定用途を説明する文章が出来上がる仕組みになっています。

 メタタグには、Happy, Sad, Dark, Positive等の形容詞がよく使用されますが、この選択肢に関してもLibrary側からリストが提供され、そこから選ぶ形になっています。

 あとは、指定されたExcelのフォーマットに作曲家の氏名、PRO情報などを記入して楽曲と共に提出するだけです。

楽曲リスト作成のススメ

 上述の通り、オーディオデータだけ送ればメタデータを用意してくれるLibraryは多いですが、楽曲が仕上がった時点で自分なりに情報を整理しておくと、後々便利だったり、間違って同じ曲を複数のLibraryに送ってしまったりするトラブルの防止にもなるので楽曲リストを作成する事を強くおススメします。

記述項目

 オーディオデータにメタデータを埋め込んでおけるツールも世の中にはありますが、私の知る限りではWavファイルは仕様上、メタデータをちゃんと保持できない仕様になっていると思うので、私はExcelを使って表を別途作成して、楽曲タイトルと対応させて管理しています。

実際に入力する項目は

  • タイトル
  • 改変後のタイトル(あれば)
  • 提出したLibrary名
  • 契約した日付
  • アルバム名(バンドルのコンセプトなど)
  • 作曲家名/共作者名のPROとIPI/CAEナンバー
  • BPM
  • テンポ
  • ディスクリプション
  • カテゴリ
  • サブカテゴリ
  • メタタグ

こんな感じです。

順番に説明していきます。

タイトル

 自分でつけた曲名。

改変後のタイトル

 Libraryによって改変されたタイトル。LibraryのカタログやPROのデータベースにはこちらが登録されるので、自分のデータと対応する様に記述しておくと分かりやすいです。

提出したLibrary名

 曲数が増えてくると、どこのLibraryと契約したのか、それとも未契約なのか忘れてしまうこともありますので、契約が成立した時点で記述しておきましょう。Exclusive契約済みの曲を間違って他のLibraryと契約してしまうと、非常に面倒な事になりますので、これは結構大事です。

契約した日付

 Production Musicは非常に時間がかかるビジネスですので、契約後、カタログに登録されるまで、PROのデータベースに登録するまで半年から一年くらいかかることもあります。契約した日付を記録しておくことで一連の手続きが適切に処理されている事を確認することができます。

 加えて楽曲のLibraryカタログへの追加、PROデータベースの登録を確認できた日付を記録しておくのも有効です。

 Reversion Clauseの行使をする際にも大事な記録となりますので忘れずに入力しておきましょう。

Reversion Clauseについてはこちらの記事で解説しています。

アルバム名(バンドルのコンセプトなど)

 Libraryにバンドルとして送った場合、各登録作業がまとめて行われる事が多いので、アルバム名を記録しておくと、そのなかで特定の曲だけ適切な処理がされていない場合など、素早く発見し対処する事が可能です。

作曲家名/共作者名のPROとIPI/CAEナンバー

 作曲家情報です。特に共作者がいる場合は、権利の分配やPROのデータベース登録が適切に行われているか確認する必要があるので必ず記載しましょう。

BPM

DAWで設定したBPMの数値を入力します。

テンポ

 主観的な楽曲のテンポ感を入力します。ルールは特にありませんが、私の基準として

BPM60以下→Very Slow
BPM60〜90→Slow
BPM90-120→Medium
BPM120〜140→Fast
BPM140以上→Very Fast

ぐらいで設定しています。

 16ビートと8ビートでも速さの感じ方が違うので、厳密に決めている訳ではなく、あくまで体感上の速さです。

ディスクリプション

 曲を短い文章で説明します。とてもカッコ良いとても激しいなどといった主観的な言葉ではなく、可能な限り客観的な言葉で曲を説明する様にしましょう。

カテゴリ

大きな括りでのジャンルを入力します。例えばロック、オーケストラ、ジャズ等。

サブカテゴリ

 カテゴリで入力したジャンルの中で枝分かれした、詳細なジャンルを入力します。

 例えば、ソフトロック、ヘヴィメタル、バロック、ロマンティック、スウィング、ビバップ、ポストモダンジャズといった感じ。

メタタグ

 楽曲に関連するキーワードを入力します。その際、カンマ+スペースで各単語を区切っておくと、Library側のシステムに登録する時など、コピーペーストが簡単になる事が多いのでオススメです。

例えば

Rock, Country, Americana, 1980s, Guitar, Distortion, Powerful, Energetic, America,Taylor Swift,

といった感じ。


 *最後にTaylor Swiftと具体的なアーティスト名を入れましたがLibraryによっては実在のアーティストの名前を楽曲に関連づけてはいけないルールを設定している事もありますので、注意して方針に従ってください。

ちなみに、Excelファイルはこんな感じになります。

 非常に簡単な書式ではありますが、私がメタデータ管理に使っているスプレッドシート のテンプレートを置いておきますので、ダウンロードしてご自由にお使いください。

↓↓

以上が、タイトル付けとメタデータの解説になります。曲作りと違い、面倒で手間がかかる管理作業ですが、想像以上にプレイスメントの結果に影響しますので、しっかりと作成しましょう。