昨年の振り返りと2022年の展望

昨年の振り返りと2022年の展望

明けましておめでとうございます。

2022年始まりました。

この記事では昨年の振り返り、今年の目標、取り組んでいる各分野の展望について書いていこうと思います。

昨年の振り返り

 昨年は、コロナ禍による自粛などもあり例年以上にスタジオにこもって曲作りをした結果、トータルで130曲以上のProduction Musicを制作する事が出来ました。細かい部分では、今までずっとやってきた

“同ジャンルの10曲をひとまとめにして提出する”

Production Musicバンドルの制作を止めて、1曲ごとのクオリティにより注力する制作スタイルに転換しました。

これに関する詳細はこちらの記事に↓

 実は収入的にはちょっと厳しい状況になっていて、一昨年のアメリカや欧米諸国のロックダウンにより多くのTVプロダクション等で新規の番組制作が止まった時期があり、その頃の影響を受けた著作権使用料の分配が去年の春頃からでした。新規にTV番組で楽曲が使用されないので、分配額は正直、かなり寂しい状態に😢

 再放送で過去のプレイスメントが再度使われたり、インターネット動画関連は逆に伸びていたりしたので、全くゼロになってしまう事は無かったのですが、Production Musicを初めて9年、初めて前年の収入を下回ってしまいました。

 ただ、こうなる事は一昨年から予測していましたし、コロナ禍が始まった段階から別の収入源を少しづつ確保していたのでとりあえず昨年は無事に乗り切る事が出来ました。

 このブログで、”Production Musicは成果が出るまでとても時間がかかる”とデメリットとしてお伝えしてきた事ですが、コロナ禍という異常事態にあっては、ロックダウン期を前年度の分配で乗り切りその間に、収入の落ち込みが予想される時期に備えるという形で時間差をうまく利用する事が出来たと思います。

 昨年の第4期(昨年1月から3月くらいまでのプレイスメント分の分配)に関しては例年を上回る収入になっていたので少しづつProcduction Music業界も通常運転に戻りつつあります。

 新規契約の面でも2021年は苦労した年でした。前半はまだロックダウンの影響があり、閉じているLibraryや稼働していても先行きの不透明感から新規の契約を渋っている所が多かった様に思います。

 4月ごろまでに50曲ほど制作しましたが全く契約が取れず、一昨年後半からの提出分合わせると一時、最大70曲以上がペンディングになっている状態で、さすがに心が折れかけました。

しかし夏前から急激に契約が決まりはじめ、10月頃には全ての曲の契約が成立しました。

 これほど長く全く契約が取れない時期が続く事は無かったので、色々な事を考えました。

その結果、大きな決断をするに至ります。それが上に書いた”Production Musicバンドル作成を止める”ことです。

 これにより契約はさらに取りづらくなるのですが、既に1200曲ほど契約している段階で次のステップとして考えたのは、契約曲数ではなく一つ一つのプレイスメントの質の向上やそこからハイエンドなCustom Jobの受注に繋げる事、さらにはProduction Music Composerのみならず、いちアーティストとして活動を広げるための準備としてよりハイクオリティな楽曲制作にシフトする事でした。 

Production Musicビジネスの展望

 私の本業と言っても良いかと思います。収入のほとんどをここから得ています。業界は目まぐるしい変化を見せているので、なんとか対応しつつ楽曲をLibraryと出版契約して著作権使用料で稼ぐスタイルを継続していきたいと思っています。

新規参入者の増加と新規契約の壁

 ここ数年は思いもしなかったコロナ禍の影響を受け、イレギュラーな時期となりましたが最近は、正常化の兆しが見えます。

 中長期的な視点でいうと、ここ数年、私も含めて業界情報を発信する人が増えて新規参入者も大幅に増えていて、契約を取るのが大変になってきている印象ではあります。

 ただし参入者が増える一方、諦めてしまう人も沢山いるので、Production Music Composerとして活動する人の絶対数が爆増しているような印象はありません。

 他の記事でも書きましたがProduction Musicビジネスで一番大変なのは最初の契約を取る事です。

 Production Music Libraryの立場に立って考えると、新たなComposerと契約するには、契約書を作成し、条件を交渉したうえで、継続的にLibraryにコントリビュートしてくれる人材か見極めなければなりません。

 さらに楽曲提出のフォーマットや、やりとりの基本的なマナーを相手が理解していない可能性があるので、細かなトラブルに対応する覚悟が必要になります。そういった意味で、継続的に取引しているComposerと契約するよりも手間やコストがかかるわけです。

 私は幸い、すでに数年にわたる継続的なお付き合いがあるLibraryが複数あるため、現時点ではその強みを活かしてより多くの楽曲を提出し契約を伸ばしていきたいと思っています。

 これから参入する方には不利な条件に聞こえるかもしれませんが、それでもLibraryはフレッシュな才能を常に探しているので、要は手間やコストをおしてでも契約したいと思えるクオリティと独自の視点を持ち合わせた楽曲を提出すれば良いのです。

 実際、そうやって業界は回っています。そうでなければProduction Music業界のComposerはお年寄りばかりになってしまうはずですから😅(多様な年代のComposerが長期に渡って活動できるので、Popsの世界より平均年齢は高いかもしれませんが💦)

AI作曲の影響

 Twitterなどでは何度か言及してきたAI作曲技術について。

 現時点でこの技術によってProduction Music Composerの仕事が奪われているという話は聞いた事がありません。

 しかしながら、そういったプロダクトのデモ音源などを聞く限りその能力は限定的ではあるものの、一瞬でそれなりのクオリティの用途に合った楽曲を大量にアウトプットできる技術はまさに脅威です。

 私自身はAIが作った曲に負けない曲を作れる自信はありますが、コストの面でAIと競争するのは不可能です。

 ビジネスはクライアントあってのものなので、もしコストを重視したクライアントが多数派になってしまえばAIによる代替はどんどん進んでいくと思います。そして遅かれ早かれそうなる事は間違いないと思います。

 ただそれが5年先なのか、10年先なのか、ずっと先なのかはまだ分かりません。分からない事は考えても仕方がないので、この問題に関しては私は一旦考えるのをやめて今、出来る最善を尽くす事にしました。

 なので業界に顕著な影響が出始めるまでは感度高く情報を入れつつ、あまり惑わされず曲を作り続ける。というのが私のスタンスです。

 根拠なきポジティブですが、現状、これ以外には思いつきません。

Horizon Blueプロジェクト

 こちらは昨年、新たにスタートした私のアーティストとしてのプロジェクトになります。

 Production Musicビジネスでは、創作の方向性こそ自由であるものの、”TV番組のBGMとしての需要がありそうなジャンル”に限定される上、楽曲のフォーマットも芸術性よりもエディターやMusic supervisorの方が使い勝手良いかという機能性に重きが置かれます。

加えて、これをビジネスとして成立させる為には日々、沢山の楽曲を制作し契約を獲得しなければなりません。

十分な報酬の対価と考えれば何の不満もありませんが、9年間にわたり1000曲以上制作していく内に

「自分が本当に得意で作りたかった音楽ってどんなのだっけ?』

という事がだんだん分からなくなっている事に気づきました。

 日々の制作を楽しむ事が出来なくなり、表現者では無く曲を量産する作曲マシーンになった気分になる事もありました。

 流石にマズイと思い考えた末、音楽性や時間的制約を完全に取っ払い、コストや収益の事も完全無視で自分が好きな曲を作るプロジェクトをやろうと思い、始めたのがHorizon Blueプロジェクトです。

 平たく言えば、お金にならなくても良いから好きな事をやろうという事ですが、実際には収益を確保する為のProduction Music制作は継続する必要があるので並行してやる形ですが、Production Musicを継続的なビジネスとして続ける為にも必要な決断だったと思います。

 私は比較的、仕事は仕事と割り切って淡々と曲作りができるタイプだと自負していますが、コロナ禍での先行き不安に加えて年齢的にも40歳を超えて

『私はこのままで良いのか?』

という世に言う”Midlife Crisis”的な疑問が湧いたという事もあるのかも知れません。

楽曲ジャンル

 元々私が、アンビエント、スムースジャズ、チルアウトなど落ち着いて聴ける大人っぽいジャンルを好む事から、上質で洗練された楽曲を制作していきたいと思っています。ただそれに限定する事なくインスピレーションを大事にして時間をかけて磨き上げた曲をリリースしていきたいです。

NFTアート

 Horizon Blueプロジェクトを始めようと思ったきっかけの一つがNFTでした。

以前から音楽が単なるコンテンツとして消費されていく風潮に虚しさを感じていた中、NFTとして楽曲を制作して流通量をコントロールしたら、自分の労力に見合った、というかその価値を理解してくれる”耳”を持った方にのみ届けて、リスナーとアーティストの間に幸福な関係を築けるのではと思いました。

この様なコンセプトの元、昨年、半ばに1曲制作してNFTとしてのリリースを試みました。

https://opensea.io/assets/0x495f947276749ce646f68ac8c248420045cb7b5e/14349744183221412678705218048926058277360512931712179534716992083113495494657/

楽曲をNFTとして公開する方法を解説したnote記事↓↓を作成しましたので興味がある方は是非。

https://note.com/musicbiz/n/nf5168a8ebc9e

 こちらはあくまでNFTとして楽曲をリリースするプロセスを確認する実験で、私自身に発信力や人気があるわけでもなく、特に告知にも力を入れた訳ではないので当然、まったく話題になる事はありませんでした。

 NFTを作成するプロセスに関してはある程度、用語の意味やNFTの概念を理解したり、Walletや販売プラットフォームの仕組みを理解したりする必要がありますが、一度一通りやれば理解できる内容だと思います。

 結局の所、問題になるのはCD販売でも、音源配信でも、NFTでも一緒でどれだけの発信力を持てるかという事なのでNFTだからといって急に売れる訳でもなく、地道に影響力を高めていく事が必要なのだと再確認しました。

 そのうえで、NFTの場合はコンテンツの供給量をコントロールできるので、供給を絞ったコンテンツにどれだけ価値があるかをうまくアピールする必要性も感じました。

 最初、NFTリリースを決めた時は、なにが何でも全てのコンテンツをNFTにして売っていこうと思っていましたが、今では考えを改めて通常のアーティスト活動と同様に、まずは良質なコンテンツを積極的に公開してある程度、認知、人気を高めた上でオーディエンスが是非とも欲しいと思えるコンテンツのみNFTにしてリリースする戦略に変更しました。

なので2022年はまずしっかりとした楽曲を制作し、積極的に広報していく事になります。

 具体的には今年中にアルバムを一枚作成してリリースできる様に活動していきます。そしてそこから派生する形でNFTコンテンツもリリースしたいと考えています。

 今の時代、アルバムというフォーマットに拘る意味はあまりないのかも知れませんが、私自身、楽曲単体ではなく10曲程度通して聴く事で伝わる様なストーリ性のある作品を作りたいと思っているので、あえてアルバムという形で制作する事にしました。

進捗は随時公開します。

Syncman’s No Copyright Music

 実はクレジット表記のみで商用可能な著作権フリー楽曲を提供するYoutubeチャンネルをやっているのですが、こちらは正直、ほとんど放置状態です。

https://www.youtube.com/channel/UCTdYpzrIkV_S1cBSaZ2f7UA

Horizon Blueプロジェクトもそうなんですが、昨年はProduction Music以外の事が完全に疎かになってしまったので今年は色々、取り組みたいと考えてはいます。

どちらかと言えば今年はHorizon Blueプロジェクトに注力したいので、こちらは今年も厳しいかも、、、😅

しかし、全く諦めた訳ではないのでいつかしぶとく復活するかも。。

そのほか、新しいスキルの習得やピアノの練習など

今年は楽曲やコンテンツを作るだけでなく、新たなスキルを習得したいと考えています。

それは主に

  • ピアノ、キーボードの練習
  • Blenderをはじめとした3DCGの勉強

です。

 ピアノに関しては多少、弾けるのですが作業効率の向上とよりピアニスティックな楽曲を制作したいという想いと、普段の制作ではかなりロジカルに曲を作っているので、よりフィジカルに音楽を楽しみながら作っていける様になりたいという願いがあります。

 ジャズ、ポップス、ゴスペルなど様々なタイプの楽譜を沢山、持っているのでまずはその辺りを弾き倒してから教則コンテンツに挑戦していきたいと思います。

 ピアノと並行してキーボードの演奏も上達したいなと思っています。

 ループ+MIDIベタ打ち後、Editで曲を作る事が多いので、よりリアルタイム演奏を取り入れた制作をしたい。特にピッチベンドや各種CCコントロールをリアルタイムでコントロールして躍動感のあるフレーズを楽曲に取り入れていきたい。

加えて、最近はBreath Controller やLeap Motionなども導入したので、よりSAXやStrings等を中心にインタラクティブな演奏にも力を入れていくつもりです。

 そしてBlenderですが、実は去年の年明けにも全く同じ事を言っていました💦

Udemyでチュートリアルなども購入しましたが、蓋を開けてみれば一度もアプリケーションを立ち上げる事なく2021年は終了。

今年こそはちゃんと取り組みたい💦

 なぜ3DCGを覚えたいかというと、一つはHorizon Blueプロジェクトなど自分の音楽作品に思い通りのイメージを付けたいから。そして今後、来るであろうメタバース時代においても自分の存在をデジタルに表現できる術を身につけておきたいからという理由です。

 現時点では、Blender?3DCG??メタバース???といった感じなので、これ以上は何も言えませんが、なにはともあれとりあえずはやってみたい

実際、このうちのどのくらい実行できるかわかりませんが、今年も楽しんでいきたいと思います。