人の音楽制作過程を見ることの意義

人の音楽制作過程を見ることの意義

 音楽理論やオーケストレーションなどを体系的に学ぶことは、音楽製作の基礎を固める上で非常に重要です。しかし、それだけでは実践的なスキルを本当の意味で習得することはできません。実際に音楽製作の現場でどのように知識が応用されているのかを理解することで、初めて学びが生きたものになります。

そのための有効なステップの一つが「他人の制作過程を眺める」ことです。このブログでは、その意義について考えていきます。


理論を超えた実践的学びの必要性

 音楽理論を学ぶことで和音や構造の理解を深めることはできますが、実際にそれをどう活用する方法は無限にあります。たとえば、「このコード進行をどう使えば曲全体が引き締まるのか」「このリズムをどう配置すれば躍動感が出るのか」といった問いに対する回答は10人いたら10通りあります。つまり正解はないのです。

 正解がないのなら自由にやれば良い訳ですが、音楽理論などを学びたての人にそう伝えるのは、砂漠の真ん中に水と食料だけ渡して置き去りにして「歩き続ければいつか街に着くよ」といっているのと同じ事です。

 どの方向に歩いても、いつかは街に着くかも知れませんが、置き去りにされた人はきっと、GPSによって現在地を把握してGoogleマップで最寄りの街を探し、どちらの方向に向かって歩くか定めてから歩きたいと考える事でしょう。

 他人の制作過程を見るというのは、まさにGPSとGoogleマップです。

 実際に、貴方が歩いて街に辿りつく必要がありますが、自分が今、どこにいて、他の人がどの方角にどれほど歩いたかを知る事ができます。

できるだけ先人と同じ道を歩いて最短距離を行っても良いし、多少回り道をして貴方だけのオアシスに辿りつけるかも知れません。


他人の制作過程を眺めることの利点

他人の制作過程を観察することには、多くの具体的なメリットがあります。

  1. 具体的な技術やツールの使い方を学べる
    使用されているプラグインやエフェクトの設定、ミキシングの細かなテクニックなど、実際の制作現場で使われる技術を直接目にすることができます。
  2. 試行錯誤のプロセスが理解できる
    制作中にどのような選択肢を検討し、何を捨て、何を採用したのか。これらの試行錯誤を見ることで、単なる結果ではなくプロセスの重要性を理解できます。
  3. 制作の流れをリアルに体感できる
    曲のアイデアがどのように展開し、最終的な形に仕上がっていくのかを観察することで、製作全体の流れを把握することができます。
  4. 理論的には正しくとも、特定のシチュエーションにフィットしないケースがある事を知る事ができます。

学びの深さを広げる体験

他人の制作過程を見ることは、単なる技術的な学びにとどまりません。それは、音楽に対する姿勢や哲学を感じ取る機会でもあります。たとえば、ある作曲家が特定の手法にこだわる理由や、音楽を通じて伝えたいメッセージを知ることで、単なる模倣ではない自分自身の制作スタイルを確立するヒントを得られるかもしれません。

なにより他人のアプローチを眺める事で自分の創作意欲を刺激され制作に対するモチベーションを上げる事ができます。


おわりに

音楽理論やオーケストレーションなどを体系的に学ぶことは重要ですが、それを実際に活用する力を養うには、実践の場が必要です。他人の制作過程を眺めることは、その実践の第一歩として非常に有意義です。

現場でのリアルなプロセスに触れることで、自分自身の音楽制作にも新たな視点やアプローチを取り入れることができるでしょう。音楽制作をさらに深めたいと思うなら、ぜひ他人の制作過程を観察するという方法を試してみてください。